私市円山古墳 埴輪壊される
本紙記者が取材中に発見
公園整備には市民からの浄財も
「市民の厚意が詰まった公園での心無い行為は許せない」―。私市町の私市円山古墳公園の墳丘部に設置されている円筒埴輪(はにわ)のレプリカが人為的に壊されていることが13日、分かった。同公園は、高速道路の建設に伴う発掘調査で府内最大級の円墳であることが判明してから、市民らの要望などによって保存が決まり、整備されて平成5年5月にオープンした。897基ある円筒埴輪の中には、市民からの浄財で購入されたものもある。公園を管理する市教委は15日、綾部署に被害届を出した。
昭和62年、舞鶴自動車道(当時)のルート上にあった私市町の標高94㍍の小高い山で発掘調査が行われた。その結果、墳丘部の直径が約70㍍ある円墳と分かり、墳頂部からは鉄製の甲冑(かっちゅう)や鏡なども出土した。
当時、日本道路公団は山を削り取って道路を造る工法を予定していたが、古墳の発見に伴ってトンネル工法に変更した。この計画変更を受け、市は古墳の復元を主にした整備事業を平成3年度から行った。
その際、郷土史家の木下礼次さん(故人)を会長にした市民団体「私市円山古墳整備促進協議会」が発足。古墳の復元を応援しようと、募金活動を行ったところ、市民らから約920万円が寄せられた。浄財の一部は円筒埴輪136基分の購入費にも充てられた。
また、同協議会は、墳丘部の整備に必要となる葺石(ふきいし)の提供の呼びかけも実施。6500個の石が集まり、その中には寄贈者の名前が書かれたものもあった。同協議会が市に寄贈した石は、約6万個の葺石の一部として使用されている。
同公園には、あやべ市民新聞社が創刊10周年の記念事業として平成5年に寄贈した48本の桜(100万円相当)も植えられている。本紙記者が13日午後3時すぎ、桜の開花状況を見るため現地へ行くと、複数の埴輪が壊れているのを偶然発見し、写真に納めた。
翌14日午前、本紙記者が埴輪の破損について市資料館に問い合わせると、地元に住む同公園の管理者から13日夕に破損の報告があったという。
埴輪は硬質の磁器製。壊された12基の埴輪の近くには、はがされた葺石が落ちていた。管理者が11日に巡回した時には埴輪に異常はなく、12日以降に壊された可能性が高いと考えられている。
オープン以降、同公園では1、2基の埴輪が壊れたことがあったが、今回のように多数の埴輪が一度に破壊されたことはなかったという。
13日午後には、市資料館の近澤豊明館長ら市職員3人が接着剤で修復作業をした。埴輪1基の価格は5万円。市教委は14日段階で警察への被害届を出さない方針だったが、「綾部市のシンボルとして親しまれている私市円山古墳での心無い行為に対して、しかるべき処理をすべき」という判断で、15日に被害届を提出したという。