楞厳寺 〝旧国宝〟返還求め署名運動
「不動明王像」明治末に盗難
現在はドイツの美術館が所蔵
国の重要文化財にも指定されている舘町にある楞厳寺の「絹本著色不動明王像」。この絵は明治時代に何者かに盗まれ、現在、ドイツのケルン市にあるケルン東洋美術館が所蔵しているが、同寺の為広哲堂住職らは4月上旬から、返還を求める署名運動を始めた。
不動明王像は鎌倉時代の作。不動明王の傍らに3人の童子が立っていることから、「三童子付不動明王像」とも呼ばれている掛け軸で、絵そのものは縦114センチ、横63センチの大きさ。
為広住職によると、明治37年に当時の国宝に指定され、先々代の住職が木箱に入れて本堂に置き、毎日、経を上げていた。しかし、貴重なものなので、中身を確認することはなかったという。
明治45年になって箱を開けたところ、掛け軸が紛失していることに気づいて、6月15日に盗難届を出した記録が残っており、正確にはいつ盗難に遭ったのかは分かっていない。
その後、80年以上たった平成6年に、為広住職が講談社の秘蔵日本美術大全という本を見ていたところ、寺から盗まれたものと同じ構図の三童子付不動明王像がケルンの美術館の所蔵品として掲載されているのを偶然発見。
文化庁などに問い合わせ、調査したところ、同寺のものに間違いことが分かった。
為広住職は何とか寺に戻してほしいと文化庁などを通じて要請したが、美術館は正式なルートで購入していることから、交渉は進んでいない。
そこで、同寺の筆頭総代である永井修さん=舘町=と、小貝町出身の檀家で、現在は西宮市で山崎建築文化財研究工房を営む山崎誠さんらとともに署名運動をすることにした。
現在は檀家の人などを中心に1万人を目標に署名を集めている。集まった署名をどのように活用するかは未定だが、為広住職は「文化庁に提出するなどして返還を実現したい」と話している。
また、「署名活動を通じて綾部にかつて貴重な文化財があり、それが今、ドイツにあることを多くの人に知ってもらいたい」と話している。
署名用紙は楞厳寺に置いてあり、参拝すれば誰でも署名できる。