現在の位置・・ホーム>>社論>>「HP万能幻想」論
社論ロゴ
「HP万能幻想」論
マスコミ使い"宝の持ち腐れ"解消を
2005(平成17)年3月2日掲載
 少子高齢化や過疎化が進む綾部市では、 市内にあった国や府の出先機関、 金融機関などの整理統合の動きが止まらない。 古里の活力の衰えに、 ややもすれば暗い気持ちにさせられるが、 嘆いてばかりいても始まらない。 綾部を活気づけようと行政も農家の農家民宿や市民農園 (貸し農園) など古里活性化へ向けた様々な動きを進めているが、 その流れを有効にするためには市外の人に綾部に関心を持ってもらう必要がある。 そこで、 交流人口の増大に向けたホームページ (HP) を見てもらうための秘策を考えてみたい。

 綾部には有名観光地のように、 一つで年間何十万人、 何百万人もの人が訪れる観光資源はない。 市民からも 「綾部には何もない」 という声を聞くが、 例えば取れたての旬の野菜や果物が食べられたり里山に囲まれた環境に住めたりするように、 ここに住む私たちが日常生活の中で当たり前に感じていることが、 都会の人の目にはすごく魅力的に映ることも多い。

 実際に、 綾部では都会の人を招いて農業体験や農家民泊を実践している団体や個人があり、 このほかにも各種農園や伝統漁法の 「やな」、 牧場、 温泉など数々の観光スポットがある。 突出したものがなくても、 総合力でアピールすれば十分集客を見込むことはできる。

 となると、 次はこれらの資源を市外へどうPRするかということになる。 その手段の一つとしてよく挙げられるのがHPである。 IT全盛の時代となった今、 綾部市を始め市内の様々な団体や企業などでは既にHPを開設しているが、 HPに関しては多くの人が勘違いをしていることがある。

 私たちは、 それを 「HP万能幻想」 と呼びたい。 HPさえあれば多くの人に簡単に自分がPRしたいことを知らせることができると思いがちだが、 それは早計すぎる。 HPというのは性質上、 見たい人がインターネットに接続して自分からアクセスしなければ見られないという能動的な側面が非常に強い。 綾部として発信したい事柄をいくらHPで上手に編集して数多く用意していても、 広く不特定一般の人に 「綾部」 とか 「綾部の○○」 を検索してもらえなければ何の意味もない。 単に 「農園」 や 「牧場」 「温泉」 などと検索されても情報量が多く、 綾部にたどりついてもらえそうにないからだ。 つまり、 「宝の持ち腐れ」 なのである。

 では、 HPで確実に検索してもらうにはどうすればよいのか。 結論を先に言うと、 最も効果的なのはマスコミだ。 具体的には新聞やテレビ、 雑誌、 ラジオなど多種多様だが、 仮に全国ネットのテレビ番組で綾部が紹介されたとすれば効果は抜群。 ただ、 マスコミで綾部を紹介してもらうには今の資源というか素材だけでは不十分かもしれない。 今ある素材にマスコミで取り上げてもらえるよう、 様々な 「味付け」 や 「盛り付け」 など工夫をすることが必要になる。

 そのためにはマスコミの体質を知り抜いた、 いわばコンサルタント (プロの料理人) のような人 (チーム) やマスコミ界の隅々に網を張った人脈が必要になる。 かと言って行政も財政難の折、 コンサルタントなどにカネはかけられない。 そこで提起したいのが市民の力だ。

 綾部出身者の中でマスコミの世界に身を置いている人は少なくない。 友人や知人を持つ人でもよい。 それらの人の人脈を活用して、 郷土愛に燃えるコンサルタントの力を借りて 「商品価値」 のあるものに仕上がった綾部の観光地や飲食関係の施設、 行事・催し、 芸術家などの素材を、 マスコミの力で多くの人々に売り込むわけである。

 今はバブルの時代ではない。 だから当然だが、 現在ある施設や現在いる人材を磨き、 有効かつ効率的に活用することが大事になる。 例えば、 市天文館に数十人のグループで来てもらって夜にゆっくりと星を見てもらうため安く泊まれる宿泊施設を近くに確保するほか、 福知山や舞鶴の立派なプラネタリウム施設との連携なども日ごろから緊密にしておきたい。

 また、 農業体験への市外からの参加者に地域通貨を発行し、 市内の商店や温泉などで使えるようするのも面白い。 あやべ球場やカヌーコース、 弓道施設、 駅伝大会などスポーツで綾部を全国に発信することもできる。 「綾部にはおいしい食べ物が少ない」 などといつまでも言わせておいてはマズイ。 これまでのように一つひとつの単発的なイベントではなく、 横の連携も深めて総合的な観光資源を作り出すべきではないか。