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地域交通
需要に合わせた地域輸送システムを
2004(平成16)年10月25日掲載
 府中北部の公共交通の一つである路線バスを持つ京都交通 (本社・亀岡市) の経営が今年に入って破綻(はたん)し、 多くのバス路線が今、 「危急存亡の秋(とき)」 を迎えている。

 会社更生法に基づき経営再建中の同社は9月、 管財人が府と沿線13市町にバス路線再編案を提示。 府と13市町は、 専門家も交えた 「府中北部地域交通ネットワーク検討ワーキング会議」 を設け、 同社の再建と地域公共交通の維持という観点から、 互いの連絡と調整、 協議を行っている。

 同社のバス路線は綾部市内で7路線計11系統あるが、 マイカーの普及などで乗客数は減少の一途。 平成9年に市内で延べ67万3千人あった乗客数は5年後の14年には29%減の同47万6千人にまで減った。 一方、 平成6年から市が運行を始めた民間委託の市営バス (西坂町―綾部駅間) も10年の延べ2万人をピークに、 13年には25%落ち込んだ。

 路線バスは、 山間部の高齢者や障害者など交通弱者にとって、 比較的安く利用できる 「生活の足」。 また1台で多人数を運べ、 環境保護という観点からも大切な交通機関といえる。

 そんな重要な公共交通機関の路線バスを守ってきた京都交通だが、 事はシビアな経営の問題。 管財人からの大阪地裁への会社更生計画案の提出期限は11月1日であり、 今、 沿線市町や府に補助金増額を含めた対応を求めて、 両者間で協議が行われている。

 ただ府を始め13市町の財政事情は程度の差こそあれいずれも厳しく、 簡単に補助金増額に応じられる状況にはない。 しかし、 20数億円とされる債務弁済も含めた会社更生計画案が大阪地裁に提出できなかったり、 同案が地裁に認められなかったりした場合には最終的に倒産という結果に終わることも予想される。

 そうなると府と13市町は行政としての責任上、 自らの行政区域内は当然のこと、 周辺地域との公共交通のネットワークも構築せねばならない。 綾部市も今、 ワーキング会議と連携して庁内で検討を重ねており、 近く市としての 「地域公共交通のあり方」 を示した具体策をまとめる。

 この問題を考える時、 最も大切なこととして我々は、 住民ニーズの把握やマーケティング調査の重要性を挙げたい。 「綾部市内で今、 公共交通に頼らねばならない人は何人いるのか」 を始め潜在需要も掘り起こすような綿密な調査が必要だ。

 自分が住む地域 (家) から市街地などへ移動したい用件としては、 どんなものがあるか。 その際、 どんな交通手段で料金がいくらくらいなら月何回、 どこまで行くか。 時間帯はどうか。 どんな条件なら乗り合いタクシーを利用するか―。

 こうした徹底したニーズ調査や市場調査の結果を踏まえ、 住民ニーズにピッタリ合った地域公共交通が何とかできないかと考えた時、 既存の 「乗り合いバス」 以外に 「貸切バスの乗り合い利用」 「市営バス」 「乗り合いタクシー」 「非営利組織の自主運行バス」 などが次々と浮かび、 様々な運営形態が考えられる。

 市内を見渡すと、 マイカー以外に多くの車両が存在する。 飲食店やホテル、 事業所などのワゴン車や送迎用マイクロバス、 幼稚園や保育園の園児送迎バス―など実に多種多様だ。

 しかも、 これらの車は毎日フル稼働しているわけではない。 市や自治会が中心になって上林や八田、 志賀郷など地区ごとに運営母体を設け、 地区内のニーズを細かく調べたうえで、 お互いの利害や条件が一致する線を見いだし、 車や運転者を活用する道を考えたい。

 京都交通は長年、 多くの赤字路線を維持してきた。 しかし厳しい言い方になるが、 国や府、 市町がこの間、 同社に注ぎ込んだ補助金 (委託金) は、 結果的には単なる 「延命措置」 に過ぎなかったとも言える。

 過去はともかく、 今後は行政がバス会社の赤字補填(ほてん)や倒産回避のために漫然と補助金を出し続けるわけにはいかない。 となれば、 府や市、 地域の総力を挙げて早急に 「ディマンド (需要)」 に合わせた 「地域コミュニティー輸送システム」 の確立をめざすしかない。

 要は、 今ある形態だけにとらわれず、 視点を 「お客様 (住民) にとってどうか」 に切り替えることだ。 当然、 法律の壁も存在する。 だが、 現行法がこうだから無理と諦(あきら)めていては何も変わらない。 法令順守は当然だが、 法律に矛盾があるなら、 みんなで法改正できるよう動くことも必要ではないか。