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放置家屋問題
安全なまちづくりと行政の限界
2007(平成19)年8月13日付掲載
 綾部の市街地で老朽化して危険な状態になった無住の木造長屋の処置が問題になっている。屋根瓦が市道に落ちそうになっており、長屋の家主らは解体などの問題解決策を講じたい気はあるが、費用負担が困難で応急処置程度のまま。近隣住民たちは行政に期待しているが、行政が個人の住宅を解体するなどの行為に踏み込むことは難しく、事態は問題発生から10カ月たった現在、完全に膠着(こうちゃく)化している。

 こんな記事を本日付で掲載した。記者が現場を訪ねて関係者の話を聞いたあと、市や府などの見解をうかがったが、まずブチ当たった壁はこういった問題に対応するのがピッタリの部署が市にないことだ。

 初めは通学路が危険だということで市教委が受け付けたが、通学路を変更したあとは市道の安全確保ということで土木建築課(現まちづくり推進課)にバトンタッチ。しかし、その後は地元自治会が前面に立って問題解決に当たっていることから、自治会関係の相談窓口である市民協働課が取りあえず担当している。

 この問題の解決を難しくしている要因は、地権者と建物所有者が別々で、どちらも複数いるため当事者が一堂に会して話し合うことが至難の業であること。しかし、個人の建物が老朽化して通行人を傷つけるなどした時には、法的には建物の持ち主が責任を取らねばならない。

 今回の件では、危険な建物の抜本的解決を図りたいという気持ちを片方の建物所有者は持っているのだが、今すぐ費用負担できないのが現状。また、もう一人の建物所有者については連絡がうまくとれない状態だという。

 そこで地元では、市会議員を通じて市や府中丹東土木事務所建築住宅室に働きかけたが、市も府も結論は「個人の財産の問題について行政は、アドバイスはできても、それ以上踏み込んで例えば解体命令を出して行政が解体処理するなどは出来ない」というもの。府によると、今回のようなケースで個人の建物の解体に府の予算を投入した事例は今までないのではないかと説明している。

 当事者の建物所有者も地元住民や市会議員に市、府も、関係するものすべてが「なんとかならないものか」と考え行動しているのだが、個人には個人の経済的な限界があり、行政には行政がかかわれる限界があって、あるところまでいくと急停止してしまう。

 今回の問題は特殊な事例のように見えるが、廃屋や荒廃した田畑の管理の問題と共通する点もあり、今後、市内各地で同様の問題が増えてきそうだ。

 その原因や背景にあるのは、綾部でも進む少子化、核家族化、過疎化、格差社会の拡大、地域コミュニティーの弱体化など。これらが複雑にからみあって同時進行する中、市内の山間部では自治機能の低下どころか、集落が消滅するのではないかという予感すら現実味を帯びてきた。

 ※本紙では、今回の問題についてのご意見のほか、あなたの地域で顕在化し始めた廃屋や田畑の荒廃の問題や解決できた事例、あるいは問題解決に向けたアイデアなどを募集します。投稿などがあれば本紙で掲載し、みんなで考えていきたいと思います。投稿の際には、あなたの電話番号など連絡先を必ず明記してください。