古墳時代の石室のオーナーさんはどんな気分―。のどかな農村風景の中に住宅が点在する西原町の申酉にある、ごく普通の民家。先祖がここに移り住んでから7代目という西村利治さん(73)方の車庫の横に、巨岩を組み合わせた古墳の石室が存在感を主張している。
民家とむき出しの石室というコントラストは一見奇妙だが、石の間から柿の木が生え、雑多な草が彩りを添えるその様は、なんとも言えない趣を醸し出している。
石室は、かつては土に覆われていたが、明治のころに掘り出されたという。ここから直刀や勾玉(まがたま)などの副葬品が「石炭箱に2杯分」出てきたと、西村さんは子どものころに祖父から聞いた。石室の奥行きも今の倍ぐらいあったのだという。
市教委の遺跡地図によると申酉古墳は直径12・7メートルの円墳で高さ2・3メートル。石室は無袖横穴式。原形をとどめる石室がむき出しになっている例は珍しい。子どものころは、石室の上に登ったりして遊んだというが、石組みが徐々に傾いてきており、危険なので中には入らないようにしていると西村さんは言う。
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