絵画やちぎり絵と比べると立体感があり、趣の違った美しさが感じられる押し絵に魅せられ、趣味で創作活動を続ける人がいる。4年がかりで完成させた屏風(びょうぶ)作品をこのほど、吉美地区の文化祭に出品し、多くの人たちの目を引いた。
押し絵を創作しているのは、里町の四方恵子さん(80)。看護師をしていた40年ほど前、医師とともに往診で訪れた患者宅で、初めて押し絵を目にして興味を持った。
患者の中に押し絵を趣味とする人があり、指導を受けた。自身も本を読むなどして知識や技術を深め、こつこつと作品作りを楽しんできた。
これまで木目込み人形のほか、十二支や小倉百人一首の人物といった数々の作品を手がけ、その数は「覚えていない」と言うほど。
9年前には埼玉県さいたま市に本部がある「東芸会」の「押し絵教授」の資格を取得。同会の木村芳山会長の名前の1文字を受け、「四方芳恵」の雅号を持つ。
自宅の作業部屋には金襴(きんらん)や絹、絽(ろ)などの端切れが整理ダンスいっぱいに保管してある。自宅にある古着も捨てず、押し絵の材料に使っている。
屏風に仕立てた作品のテーマは、「お伊勢参り」。書物に載っていた絵を参考にしながら、作った。白馬に乗った女性や歩いて同行する人たちの様子が押し絵で表されている。二つ折れになるこの作品は高さ125センチで、広げると幅が140センチになる。
人物の顔は白い布に小筆を使って描いたが、表情がうまく表せず、何度もやり直した。衣服の部分は金襴などの布を用いた。布に厚紙や綿をくるんで厚みを出し、部品を張り重ねて作った。
製作は家事や農作業などの合間を縫って、少しずつ進めた。夫が病に伏した時は、押し絵には手を付けられないほど余裕が持てなかったという。それだけに今回の作品は思い入れの強いものになった。
「押し絵は細かい作業が多く、失敗するたびにやめたくなった」という四方さん。それでも「完成した時の喜びが大きいので続けられた」と話す。
四方さんは二つ折れの屏風作品を新たに作製して、今回の作品とつなげて四つ折りの大作に仕上げることも考えている。
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押し絵に魅せられ創作活動
里町の四方恵子さん(80)が趣味で
4年がかりの屏風作品も
吉美地区文化祭で目を引く
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