父の遺品の中に戦時国債が
並松町の坪内道代さん
整理中に発見、本社へ持ち込む
額面計60円、敗戦で紙くず同然
でも「父が生きた時代の証、大切にしたい」
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「父の遺品を整理していたら、 こんなものが出てきました」 とあやべ市民新聞社にこのほど、
4枚の古い国債が持ち込まれてきた。 戦時中に発行されたもので、 額面は合計60円。
敗戦で紙くず同然となり、 今となっては骨董(こっとう)品的な価値しかないが、
持ち主は 「父が生きた時代を証言するものであり、 大切にしまっておきます」
と話している。
4枚の国債の持ち主は並松町の坪内道代さん (57)。 道代さんの父で元地方公務員の栄次さん=本町2丁目=は今月7日、 93年の生涯を終えた。
発見された国債は栄次さんが購入したものらしい。 額面10円の支那事変割引国債 (昭和16年発行) が1枚と額面10円の大東亜戦争割引国債 (同17年) が2枚、 額面30円の大東亜戦争割引国債 (同18年) が1枚。 いずれも償還期日は発行日から10年後となっている。
昭和6年に勃発した満州事変はやがて日中戦争、 太平洋戦争へと拡大。 国は膨大な軍事費を調達するため法律を公布し、 敗戦まで各種国債を大量に発行した。 債権の価格や償還方法は様々で、 たとえば支那事変国債は年3分3厘の利子付き、 戦時貯蓄債権は無利子だが、 割引販売されていた。
このころのことをよく知る西村勝美さん (84) =味方町=は語る。 「当時は、 お上の命令にノーとは言えなかった時代。 戦費調達の手法として戦争割引国債などが発行された。 綾部でも町民は半ば強制的に買わされたが、 お国のためならとだれもが精いっぱい協力しました」
西村さんによると、 昭和16、 17年の10円の値打ちは1人が1カ月暮らせ、 2人でも節約すれば生活できたというから今なら10万円程度。 50円は学校の教頭先生の月給だったと記憶しているという。 いずれにしても、 こうした戦争割引国債や軍用手票といったものは敗戦で価値を失った。
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