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ちょっと ドライブ
福知山市丹波生活衣館福知山市内記
2006年(平成18)1月13日掲載
福知山市丹波生活衣館

昔を思い出しながら展示品に見入る来館者

庶民の生活衣をコレクション

着物の奥深さと先人の知恵感じられる


 福知山市に住んでいた河口三千子さん(故人)は、昭和30年代後半から失われてゆく地場産の繊維製品や着物などの染織品を収集していた。

 河口さんは、その趣旨に賛同した有志の協力を得、資料の収集、整理をし、市に寄贈した。この資料を展示し、見て触れられる施設として平成14年、福知山市内記に福知山市丹波生活衣館が開館した。

 生活衣とは、 日常生活の中で用いた衣類や染織製品を総称した言葉で、 庶民の生活衣(普段着)を中心にコレクションされている。生活衣は、 生活様式が大きく変化していく中で廃棄されることが多く、現在では同館以外ではほとんど残されておらず、2076点ある資料は貴重で、順次展示されている。

 お宮参りに着る一ツ身。帽子や前掛け、お守りがセットになっている綿入れ。半襦袢(じゅばん)と対の絽(ろ)の単衣(ひとえ)。

 女の子のものはほとんどが花柄。ピンクや赤、紫、黄などいろいろな色が使われていて、華やかで可愛(かわい)い。

 男の子のものは、紋が入っていて、竹や虎、太鼓といった柄が多い。女の子は可愛く、男の子は凛々(りり)しくという親の願いが感じられた。

 おばあちゃんの手作りなのか、いろいろな布を組み合わせてある”でんち”はとても今風な雰囲気がある。「パッチワークに決して負けていない」と感心していると、来館者に声をかけられた。

 その人は、絵や色使いの観点から着物に興味を抱くようになり、かなりの着物を集めているとか。

  「昔の着物には奥ゆかしさのある派手さ、あでやかさがあり惹(ひ)かれる。時代によって色や柄の流行があり、袖(そで)の丈や使われている生地に、その時代の背景が偲(しの)ばれる」と話してくれた。戦時中に仕立てられた物は女物にでも、錨(いかり)や旭日旗が刺繍(ししゅう)してある。

 「こうずき」や「オチョメチョ」など、何年かぶりで接した懐かしい言葉もあった。

 また、昔は暖かさイコール厚さ、重さの要素があり、外套(がいとう)やマントには重量が記してある。その重さを体験してもらおうと、羽織ってもいい上着が用意してある。

 子どもの祝着2枚を仕立て直した長襦袢。古布を細く引き裂いて織った帯。50もの接ぎを当てた仕事着。

 貧しい中で物を大事にし、必要から工夫を重ね、それでもおしゃれ心を失わなかった昔の人。季節感あふれる柄、場やしきたりに応じた格、生活に密着したもんぺ、手甲(てっこう)、巻き袖、脚絆(きゃはん)。改めて、着物の奥の深さと先人の知恵を感じた。

ルート
 府道8号(府道福知山綾部線)沿い旧ハローワーク福知山跡。

メモ
 入館無料。休館日=火曜。開館時間=午前9時〜午後5時。問い合わせは23・6070。