静かで落ち着いた雰囲気のギャラリー
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田舎暮らしの良さ 改めて実感
民家を改造して自作の陶芸作品を展示
兵庫県氷上郡市島町にあるギャラリー・天神窯。 6年前、 脇阪昌容(しょうよう)さん
(56) は 「静かな所で田舎暮らしがしたい。 ゆったりした時間の中で仕事がしたい」
と京都の醍醐から移り住み、 窯を開いた。
眼下に田んぼが広がる小高い所にある茅葺(かやぶ)きの屋根にトタンをかぶせた昔ながらの民家。
道路から玄関までの数bの小道の横には一輪挿しや壺(つぼ)、 大皿が無造作に置かれている。
母屋の続きにある作業場の出窓にも、 黄色やピンクの小さな花模様の花瓶や器などが展示されている。
玄関前の庭は庭で、 面白いうねりの古木や石が配してあり、 もう野草が芽吹いている。
のれんをくぐり、 どっしりとした引き戸を開ける。 当然、 土間だと思って踏み入れかけた足の重心を、
グッと踏ん張り、 とっさに後ろ足にかけかえる。 一面に細い竹のような物が敷きつめてあり、
土足で入るのをためらってしまった。
「どうぞ、 どうぞ」 と招かれ、 脇阪さんが1年余りをかけて一人でコツコツとリフォームしたという家の中に。
玄関の正面には大きな壺や湯のみ、 鉢などの作品。 左の間には囲炉裏があり、
久しぶりに目にした豆炭がいこしてあった。
3本のすす竹の上を交差させた淡い照明。 木製の煙草(たばこ)盆。 そこにあるもの一つひとつに個性がありながら調和がとれ、
いい雰囲気をかもしだしている。
「どこに座っても自分が好きな場、 だれが来ても落ち着ける場を作りたかった」
と脇阪さん。 聞きたいことはたくさんあるはずなのに、 囲炉裏の端に座り陶器や置物を見ているだけでその思いが伝わってくるようで言葉が出てこない。
京都の路地でふと目に止まったろくろ。 手の動きによって土が伸びたり膨らんだり、
自在に形が変わるのを見て魔法の道具に思えたという。
そんな話やギャラリー周辺の大杉ダムの桜の見事さ、 星の話、 私たちが慣れて当たり前になっている田舎暮らしの良さを改めて感じさせてくれる。
器の把手がスパッと付いた時の感動、 窯の温度の調節の難しさやほんの些細(ささい)なことで出来上がりが違ってくる面白さ。
「早く見たい、 早く見たい」 という窯出しの際のワクワク感など、 陶芸に関する話もたくさん聞かせてもらえる。
洒落(しゃれ)た田舎暮らしやどこか京都の匂(にお)いのする空間に、 生き方や楽しみ方を見つめ直してみたくなるような場だった。
5月5日から15日まで、 福知山市興のギャラリー"風音"で個展を開く。
散歩や用事で留守にしていると申し訳ないから 「来て下さる前にはご連絡を」
とのこと。
ルート
国道175号で市島町に入り、 八日市の交差点を右折する。 大杉ダム自然公園の看板に従って進み、
およそ4キロ。
メモ
問い合わせは同ギャラリー (0795・85・2489)。
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