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少子化対策
"保育料タダ"で若い世帯を綾部に
2005(平成17)年2月2日掲載
  「人口は活力の源」 と言われるが、 その大切な人口が綾部市で減り続けて久しい。 人口増減は社会動態と自然動態を差し引きしたあとの数字だ。 だが、 今回は誰(だれ)でもよいから市への転入者を増やして転出者を減らすというのでなく、 子どもができる若い夫婦の転入を増やしたり、 今いる夫婦に2人目、 3人目の子どもが生まれることで人口増となる施策を考えてみたい。

 綾部で生まれる子どもの数は四半世紀余りで半減している。 第2次ベビーブーム(昭和46〜49年)も落ち着いた昭和52年度、 綾部では560人が生まれたが、 平成15年度は281人。 出生から死亡を引いた自然動態はプラス134人からマイナス176人となり、 平成に入って一度もプラスに転じていない。

 出生者数を増やすには若い夫婦に一人でも多くの子どもを産んでもらえばよいのだが、 その前にまず未婚者を減らすことが大切だ。 ところが、 未婚者の数は簡単には減りそうにない。 その原因の一つには、 自立して所帯を構えられない男性が最近増えてきたことが挙げられる。 産業構造の変化に伴って産業界が、 ほしい時だけ雇用できる派遣社員や契約社員などを増やしているという現実からくるものだ。 加えて 「水道料が高い」 「下水道整備が遅れている」 など、 綾部が生活しにくいイメージで見られていることも影響していないか。

  「子どもをつくる気のない家庭」 に 「補助金を出すから産んでくれ」 と言っても、 効果は薄い。 では、 既に子どもを持つ家庭に綾部に来てもらう手立てとして 「子育てしやすい町」 というイメージ作りをし、 「子どもを育てるなら綾部で」 となるインパクトのある施策は講じられないか。 例えば、 乳幼児を持つ家庭には国の児童手当に似た 「育児手当」 を保育園の保育料が 「タダ」 になる程度まで加算するのはどうだろう。 近隣市町の若い夫婦に、 「子育てするなら綾部が断然有利だ」 とアピールできるのではないか。

 少子化は全国的な問題だ。 平成15年の合計特殊出生率は1・29で、 人口を維持するのに必要だと言われている2・08を大きく下回っている。 少子化が進む先進国の中でも日本は対策が最も遅れていると言われており、 現状だと来年をピークに日本の人口は減少し始める。 仮に現在の出生率の水準が続けば、 100年後には6千万人、 500年後には縄文時代並みのわずか13万人となるという試算まである。 今すぐ国が抜本的な制度改革、 社会構造の変革をしなければならない。

 子どもが少なくなった原因は様々あると考えられるが、 金銭面もその大きな要因の一つだろう。 ”お金のいる社会”になり、 核家族化が進行した現在、 生活にかかわる支出はかつてと比べものにならない。 子育てにかかるコストも増大している。 その軽減のためには必要とするすべての家庭に、 安価で多様な子育て支援を提供する必要があるだろう。

 秋田県は平成15年度、 全国で初めて 「第1子の0歳児の保育料無料」 (補助率は県と市町村で折半) を実施した。 全国的なニュースになったが、 寺田典城知事は同県のホームページの中で 「この施策はかなり実験的なものであり、 効果を検証しながら今後の対応を検討したい」 と語っている。 また、 静岡県湖西市では昨年、 12月市議会に児童手当に似た市の特別育児手当制度を上程した。 3歳未満の子どもに1人当たり月額5千円を支給するものだが、 「支給額が少ない」 などの意見が出て、 三上元市長は1月17日に議案を撤回した。 精査して次の議会に再提案するという。 このような動きも踏まえ、 綾部市でさらにもう一歩、 踏み込むことは出来ないか。

 16年度末(見込み)での、 綾部市の保育園運営費は、 幼児園を含め10施設合計で6億7882万円。 うち保護者が保育料として負担しているのは2億5609万円で、 市の負担額 (補填=てん=額含む) が1億3564万円。 割合では保護者が37・7%、 市が19・9%、 残り42・4%が国と府の負担となっている。 ちなみに福知山市は15年度のこの割合が保護者30・3%、 市25・4%。 舞鶴市は保護者24・6%、 市31・4%。 つまり 「保育料タダ」 のためには、 現状でも年間2億5千万円の新たな財源が必要となる。 しかも、 綾部市内の0〜5歳児のうち、 幼稚園入園児も合わせた入所者割合は61・5%と、 約4割の乳幼児は保育園・幼稚園に通っていないとみられる。 「育児手当」 として保育園児以外の未就学児にも同等金額を支給するとなると、 単純計算で計5億円近い支出となる。

 仮に 「保育料がタダ」 になった場合、 市外から転入した園児を受け入れる施設の余裕は、 現状ではない。 16年度の市内の各保育園への入所状況は、 入所率 (定員と実際の入園者数の率) で100%を下回っているのは10施設中3施設。 逆に高い所では133%という施設もある。 総合計での入所率は108%。 入園を希望する園児が多くなった場合、 現状では施設も人員 (保育士) も足りない。 しかし、 新たに施設を建てるのではなく 「空き教室の目立つ幼稚園との統合」 など”遊休施設”は活用できないものか。 人員の不足は雇用促進の面から前向きにとらえることもできる。

 何度も言うが、 少子化は国の根幹を揺るがす大問題で、 国の最重要課題の一つである。 しかし国の腰が重い以上、 市町村が単独で施策を打っていく方法もある。 この場合、 「育児手当」 は市の単費で行わなければならず、 厳しい財政状況の中で実施が可能かどうか大いに課題は残る。 しかし、 生産年齢人口の流入による市財政への将来的なプラス効果と地域経済への波及効果は確実で、 想像以上に大きい。