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民生児童委員
市民も職務への理解深めて貢献を
2004(平成16)年11月26日掲載
 民生児童委員の改選が12月1日、 全国で一斉に行われる。 厚生労働大臣から委嘱される民生児童委員は都道府県の 「非常勤特別職地方公務員」 という身分で、 少子・高齢化が進む地域社会で住民からの様々な福祉ニーズに関する相談に応じる身近で重要な存在。 住民と行政を結ぶ 「パイプ役」 としても地域福祉の推進にかかわる大切な職務を担っている。

 民生児童委員は人口10万人以下の自治体の場合、 120〜280世帯に1人の割合で配置される。 綾部市の定数は130人 (主任児童委員は14人)。 3年ごとの改選時には本来なら、 法律に基づいて市町村が設置する民生委員推薦会が一から選ぶのだが、 綾部市の民生委員推薦会では候補者の選出を市内各地の自治会長らに依頼している。

 7月に依頼を受けた自治会長の中には、 9月13日の選出期限に間に合うよう民生児童委員選出に頭を痛めた人も少なくない。 自治会長が候補者を人選の際、 まず大きな 「壁」 となるのが年齢。 民生児童委員は新任の場合が65歳未満、 再任の場合が75歳未満、 主任児童委員は新任・再任とも55歳未満と定められているからだ。

 しかし過疎・高齢化に伴って、 この年齢制限だけで照らし合わせても住民の中で該当する人が限られ、 所によっては該当者が 「いない」 ということも起こりうる。 児童福祉に関する事項を主に担当する主任児童委員は小学校区単位で1人か2人配置されているが、 55歳未満という年齢条件は 「現役」 で働いている人が対象となるため、 候補者選びに当たっては特に苦労がある。

 この緩和策として、 新任の民生児童委員は最高69歳、 主任児童委員は最高59歳までという一定の年齢超過が認められている。 今回の改選では民生児童委員で15人、 主任児童委員で7人 (新任5人、 再任2人) が年齢超過の理由書を添えて推薦されている。 こういった年齢制限を含め制度全体を見直さないと今後、 民生児童委員の選出が更に困難になると考えられる。

 今回の候補者の選出の際、 ある自治会では年齢制限に加え 「人権感覚がある」 「他人のプライバシーを確実に守れる」 「活動時間を確保できる」 といった数々の要件を兼ね備えた候補者を住民の中から抽出しようとしたところ、 結局は現職の民生児童委員に 「再任」 をお願いせざるを得なかった。

 1人の民生児童委員が複数の自治会を担当する場合、 当該自治会間の申し合わせで1期ごとに候補者を順番に選出しているケースもある。 市内でも地域事情によって選出方法は様々だが、 自治会長ら関係者の労苦は計り知れない。

 その一方で、 「地元の民生児童委員がだれなのか知らない」 「民生児童委員は何をしているのか分からない」 などという声をよく聞く。 民生児童委員は高齢者や障害者、 児童、 母子、 父子といったあらゆる福祉の分野で支援を必要とする人の援助活動をしているが、 職務を通して知りえたプライバシーに関する事項を口外することはない。 そのため、 具体的な活動の様子が第三者に分からないのは当然のことでもある。

 民生児童委員は、 ある意味で 「多忙でない」 ことが望ましいと言える。 しかし現実は、 平成15年度に市内の民生児童委員が対応した相談・支援の総数が前年度より609件増の1万288件になるなど、 民生児童委員の存在の重要度は高まっている。

 かつて民生児童委員は法律で 「名誉職」 と位置づけられたが、 その部分は削除され、 「住民の立場に立った活動」 が求められるように変わった。 その活動の一つに1人暮らしの高齢者らの安否確認がある。 今秋、 豪雨と強風を伴う台風が次々と到来した際、 民生児童委員らの声かけで安心感を抱いた人も多かったことだろう。

 住みよい地域社会を築いていくため民生児童委員が果たす役割は大きいが、 1人の民生児童委員が担当地域全体に目を配ることは極めて困難だ。 そこで提案したい。 住民一人ひとりが民生児童委員について理解を深めるとともに、 出来る範囲で近所とのつながりを積極的に強める努力をしてはどうか。 それこそが綾部で 「福祉の土壌」 を築く一歩となり、 間接的に民生児童委員の活動を支えることにつながることは明らかだ。