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ホテル綾部問題
公共性ある施設、存続へ模索を
2009(平成21)年5月6日付掲載
 米国発の世界的不況の影響を受けて日本の大半の企業が業種や地域を問わず苦しんでいる。綾部でもホテル綾部が4月30日、昨秋からの急激な売り上げ減少の結果、民事再生法適用の申請を行い、受理された。今後は営業を続けながら早期に新しい経営者を探し、再生計画案の承認を受けてホテル事業を再生させたいという。

 このホテルについては、8年前にも同様の事態が生じた。前の経営者と今回の経営者はタイプこそ違うが、共通点もあった。シティーホテルの経営に私財を注ぎ込んで自らのロマンを追い求め、ホテルの公共性を重視し地域貢献を目指す意識が感じられた点だ。

 綾部は小さな地方都市だが、町で唯一のホテルとなると、果たさねばならない役割は多い。友好都市など海外からの来訪客を迎える機会は当然ある。市内の政治や経済、文化、体育など様々な分野の団体や工業団地企業、法人が100人、200人規模で祝賀会や大会をするには、やはり風格のあるホテルが必要だ。

 4月にホテル綾部で団塊世代の綾高卒業生の還暦記念同級会があり、本紙で取材した。230人余りの同級会で、実に壮観だった。(地域ナショナリズム丸出しと非難されるかもしれないが)前述の綾高卒業生の同級会や市の公式な行事、市内の団体の祝賀会が隣の市で開かれる光景なんて考えたくもない。

 とはいうものの、特に地方都市でのホテル経営は決して甘くない。ホテル綾部の設立に当たっては340人の株主の多くを1株5万円、10万円の株主が占めるという「市民のホテル」を目指したが、結果的には経営を支えきれなかった。

 従業員30〜40人を雇用し宿泊施設や大宴会会場、レストラン、和食、売店など多機能な使用目的を持つホテルの経営が綾部では極めて困難であることは、既に証明された。

 だが人口4万人弱の地方都市であっても、誇るべき歴史と伝統を持つ綾部市に大宴会場と宿泊、喫茶・軽食など最低限の機能を持つホテルは必要ではないか。再生計画案の内容に立ち入るようだが、例えば宴会は仕出しを使うなど様々な業務提携の道を探ってでも18年前に十数億円の建設費を投じ、増築もされたホテルを綾部に残せないかと思う。

 ホテル綾部は今後、業務を続けながら債権者説明会、再生計画案の提出、認可を経て事業再生を目指す予定だ。従って焦点は再生計画案がどのようなものになり、債権者らが計画案にどう対応するか、事業を引き継ぐ新しい経営者が見つかるか―などに絞られてくる。今後の推移を注意深く見守っていきたい。