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幼児園
幼児園の充実で子育て環境整備を
2006(平成18)年3月3日付掲載
 近年、 「我が子を幼稚園と保育所のどちらに預けるか」 というのが、 多くの保護者にとって子育てをする上での悩みとなっている。 しかし、 国は幼稚園と保育所を一つにした 「認定こども園 (仮称)」 の導入を今秋に予定し、 更には学力低下を防ぐため幼児教育の義務化の話も浮上するなど、 就学前の乳幼児を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。 こういった流れに先駆け、 綾部市は保育と教育の両方を提供する幼保一元化施設 「幼児園」 の開設を市内全域で進めようとしているが、 幼稚園か保育所かの選択肢を失う保護者の賛否は分かれている。 ただ、 現在の社会情勢を勘案すれば幼児園の導入と、 それに伴う幼稚園の閉園はやむを得ず、 そのためにも保護者が安心して子どもを預けられる幼児園の充実が急務だ。

 現在、 就学前児童を受け入れる施設は大きく幼稚園と保育所とに分かれる。 幼稚園は文部科学省、 保育所は厚生労働省と所管が異なり、 縦割り行政の弊害も指摘されてきた。 幼稚園は幼稚園教育要領に沿った 「保育に欠けない児童」 の教育施設、 保育所は保育所保育指針を基に、 「保育に欠ける児童」 を保育し、 更に3〜5歳児に対しては幼稚園教育に準じる教育も行う児童福祉施設とされている。

 綾部市では近年、 少子化や共働き家庭の増加で幼稚園の園児数が減少している半面、 保育所の園児数は増加傾向にある。 平成16年度当初の5歳児の園児数を見ると、 保育所は9保育所と1幼児園で計232人。 これに対し幼稚園は5園 (旧奥上林幼稚園含む) で計118人と、 その差は明らか。

 こうした状況を受けて平成16年4月に市内で初導入されたのが中筋幼児園であり、 今春からは綾東幼児園も開設される。 幼児園設置に伴って幼稚園は順に閉園されることになり、 幼稚園教育や、 月8千円という低額の保育料を望む保護者は幼稚園の存続を訴えているというのが現状だ。 しかし逆に、 夫婦共働きなどの事情から家庭で保育ができない保護者にとっては保育所、 もしくは幼児園に子どもを預けざるを得ないというのも現実である。

  「幼稚園イコール教育施設」 という認識から幼稚園だけが教育を行っているようにとられがちだが、 保育所も教育を行っている。 ただ、 保育時間が短い幼稚園教諭と、 一日中園児と向き合っていられる保育士とでは、 園児一人ひとりにかけられる時間に差があり、 それが結果として教育効果に表れているのは事実。 こういった問題点を踏まえ、 市は幼児園に幼稚園教諭2人を派遣。 更に1日の保育時間のうち1時間半〜2時間程度、 フリーの保育士を配置して担任が保育現場から離れ、 子どもの様子を見つめ直す時間を確保している。

 教育面とは別に、 専業主婦などの家庭では保育料の安さも、 幼稚園を希望する大きな理由になっている。 幼稚園の保育料は昭和63年度以降、 16年間にわたって月6千円を維持してきた。 しかし、 社会情勢の変化や行財政健全化の観点から、 長年据え置かれた保育料は平成16年度に月8千円に改定された。 この間、 園児数確保のため平成10年度からは午前8時から午後2時までの保育時間とは別に、 午後4時まで2時間の預かり保育を始めた。 この2時間を行政サービスとして無料にしたことが、 「安い」 幼稚園の背景にあり、 こうした 「特典」 が受けられない幼児園の保育料を 「割高」 と感じる要因になっている。

 幼児園に移行されれば、 幼稚園を利用しようと考えている一部の保護者の経済的負担が大きくなる。 だが、 市内に住むすべての乳幼児に教育と保育を平等に提供しようというのが幼児園であり、 かといって財政が厳しい市に幼児園だけでなく幼稚園まで運営できるほどの財政的な余力はなく、 幼児園で統一せねばならないというのが現実。 ならば、 幼児園での教育内容や保育料の負担軽減などの充実を願い、 市民が子育て環境の整備に理解を深めるべきではないだろうか。 集団生活の中で子どもたちが学ぶことは多い。 だがその前提には、 家庭での教育があることも忘れてはならない。