2011.08.12pickup01

連載 変わりゆく葬儀(1)

少なくなった「自宅葬」

「多死社会」控え、9月から連載

変わりゆく葬儀

一日最多で6件の火葬が可能で、通夜式と葬式ができる葬祭場を備えた市斎場(田野町で)

葬儀のやり方や葬儀についての考え方が綾部でも近年、目に見えて変わってきた。特に変わったのは葬儀場。つい20年ほど前まで主流だった自宅での葬儀は、いつの間にかあまり見かけなくなった。「直葬」「家族葬」といった葬儀は都会に比べるとまだまだ少ないが、葬儀と初七日を一度で済ませるなどは綾部でも今や当たり前。そのほか、菩提寺(ぼだいじ)と檀家の関係や墓の問題など、葬儀関連分野の様変わりが目につく。9月開始の連載で綾部の実情を探りたい。      (高崎)

「多死社会」という言葉をご存知だろうか。「少子高齢化社会」という言葉がすっかり浸透してきたが、団塊の世代が既に還暦を過ぎた今、考えるべきは超長寿化の先の問題。彼らが平均寿命に達する平成42年(2030)頃には年間、今の約1・5倍の170万人が死亡するとも予想されている。

死ぬ人が増えると葬儀ビジネスの市場は広がるかというと、そうは言い切れない。今でも80代以上の死亡者は多いが、その子どもも退職していることが多く、仕事関係などの「義理会葬者」は減る。葬儀の小規模化だ。

また遺族や親族が遠く離れて住んでいるというケースが多くなった現在では、葬儀と初七日を同じ日に営む風潮が強まるなど、葬儀や法事の簡素化、合理化は今後も進みそう。

さらに、都会で年を追うごとに増えてきたのは「直葬」と呼ばれる葬送形式。これは、病院などで亡くなり死亡診断書が出てから24時間たったあと、自宅や葬儀場で通夜や葬儀を行わず火葬場で直接、荼毘(だび)に付すやり方だ。

それに加え我が国では、20年ほど前から葬儀や墓、寺と檀家の関係などが大きく変わり始めてきた。都会では、葬儀や埋葬の変化の流れを受けて血縁を超えて入る「合葬墓」が登場。葬儀や戒名を拒み、永代供養の納骨堂に入ることを生前に選択する人も出てきた。

デフレ不況下にあって、高額の葬儀や菩提寺を支える檀家の負担が家計を圧迫しているという声を綾部でもよく耳にする。昨年秋には大手小売店のイオンが「安心の明瞭会計」を掲げて葬儀事業に参入。全国の寺院の大半が加入する全日本仏教会と激しく対立したことは記憶に新しい。

小規模葬の家族葬が増える中、綾部では近年、JA京都にのくに中部葬祭センターやセレマに加え、綾部葬祭社、三友社、沙羅双樹葬儀社、綾部アンジュセレモニーホール、明日香セレモニーいかるがホールといった葬儀社が次々と開業した。

まさに「生き残り戦争」の様相を呈してきたようにも映る綾部の葬祭業界の現状を9月からレポートしたい。

【投稿募集】連載「変わりゆく葬儀」は9月からスタートし、週1回のペースで連載する予定です。葬儀や墓、寺と檀家の関係などに関する読者の皆さんの率直なご意見をお寄せ下さい。
(原稿は600字程度まで。紙上匿名は内容によって認めますが、氏名と連絡先は必ず明記してください)

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